その狂愛からは、逃れられない。
未だに鳴り響くスマートフォンの受話ボタンをやっとの思いでタップした蓮華は、耳に当ててそっと深呼吸をした。
「……お母さん」
「蓮華!? 蓮華なの!? 今どこにいるの!? もうっ! どうして来なかったの! 心配したじゃない!」
言いたいことが山ほどあったのだろう。一気に叫ぶように言い切った母親に、蓮華は何も言えずにただ涙を流した。
行為中は痛みなど感じなかったのに、今になると感じる下腹部のジン、とした強い痛みがさらに胸を痛めた。
「……ごめん、なさい」
やっと出た言葉は、謝罪だった。
蓮華の声に何かを感じ取ったのだろう。蓮華の母親は、それ以上蓮華を責めることはしなかった。
光が起きる前に。そう思って慌てて部屋を飛び出した蓮華は、充てがわれている自室に戻って鍵を掛け、ベッドに顔を押し付けて泣いた。子どものように声を上げて泣いた。
怖かった。自分が女であり、光が男だということを身を持って教えられた。教え込まれた。体に刻み込まれた。それが怖かった。
悔しかった。そんな恐怖の中でも、一瞬でも快感に溺れてしまった自分が、悔しかった。
あんな状況で、気持ちいいと思ってしまった。気持ちいいという感覚を知ってしまった。
こんな形で純潔を失いたくなかったし、こんな形でその感覚を知りたくなかった。
そして自分の知らない自分の一面を知ってしまった気がして、それが何よりも恐ろしかった。