猛虎の襲撃から、逃れられません!

その通りだ。
中学部までは眼鏡なんて必要なかったのに、運動をやめて勉強に切り替えた途端に視力が落ち始めた。
今では0.1 あるかないか。

体が大きい上に眼鏡までかけていたら、『眼鏡山女』と男子に言われたりして。
高校1年の夏休みにコンタクトに切り替えた。

「先輩の瞳って、茶色い部分が薄くて綺麗っすね」
「っっ……」

まじまじと至近距離で見つめられ、顔に熱が集中する。
トマト担々麺の湯気の熱さじゃないよね?
これは、彼の視線のせい?


ラーメン屋さんの女性スタッフさんですら、チラチラと彼を盗み見してる。
通りを歩けば、当然のようにすれ違う人々の視線が彼に向けられ、うっとりと見惚れた視線が隣りを歩く私を捉えた途端に『んっ?!』みたいな顔になるのを私が見逃すはずがない。

もう慣れっこだけれど。
やっぱり、気分のいいものじゃない。

今日は最初で最後のデートだ。
高校3年間、勉強を頑張ったご褒美なのかもしれない。



「ごめんね、奢らせちゃって」
「俺が誘ったんで」
「……ありがとう」

ラーメン屋さんを出て、駅へと向かいながら御礼を口にする。
こんな風に女の子扱いされたら、勘違いしちゃう。
ぬりかべのようにデカい体でも、女の子に見えるのかな?だなんて。

< 27 / 154 >

この作品をシェア

pagetop