猛虎の襲撃から、逃れられません!

顔が爆発したみたいに熱くて、味なんて分からない。
どうやってお昼ご飯を食べたのか、途中から記憶がない。

お昼休みが終わる予鈴が鳴り、周りの生徒たちも食器を片付け始めた。

「5時間目、何の授業?」
「古文っす」
「うっわぁ~、睡魔とバトル頑張って」
「先輩たちは?」
「うちらは数学」
「それもハードっすね」
「古文よりマシでしょ」
「確かに。あっ、先輩」
「……ん?」

返却口へと向かっていると、顔を覗き込むような感じで彼が視界に現れた。
そして、雫の耳元にそっと話しかける。

「日曜日、暇っすか?」

彼の吐息がかかって、耳が擽ったい。
両手でトレイを持っているから、余計にそう感じるのかもしれないけれど。

「日曜日にN校との練習試合があるんですけど、俺の試合、見に来ませんか?」
「練習試合?」
「はい。……ダメっすか?」

土曜日は塾が入ってるけど、日曜日は入れてない。
行けないわけではないけれど、私なんかが行ってもいいのだろうか?

「部外者がいても平気なの?」
「白修館の道場でするんで、大丈夫っす。じゃあ、詳しい時間とかは後で連絡入れますね」
「……ん」

5時間目の授業に遅れたら困るから。
咄嗟に断る理由が思いつかなかったから。

気づいた時には了承の頷きをしていた。

いつもながらに颯爽と戻っていく彼。
こっちは胸がバクバクして、呼吸するのも大変なのに。

「津田くんから、デートに誘われた?」
「……デートというほどのものじゃないけど」

返却し終えたちーちゃんが声をかけて来た。

「日曜日に練習試合があるらしくて、見に来ないか?って」
「デートじゃん」
「……そうなの?」
「雫に応援して貰いたいんだよ、彼は」

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