猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)
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1月下旬の早朝。
大学入学共通テストも無事に終え、安堵する間もなく本試験。

推薦入試を受けているとはいえ、合格通知はまだない。

本試験の結果次第、一般入試の子たちよりも一足先に合否の確定があるということしか知らない雫は、この本試験が何よりも大事な日だというのは分かっている。

2週間前のセンター試験の日と同様に、改札を抜けた先に彼がいた。

「おはよ」
「おはようございますっ」

近くを通りすがるサラリーマンの人達が振り返るほど張った声に、思わず肩がビクッと震えた。

「あ、すんません。つい」
「いや、気合入った。ありがとね」

彼なりの応援なのだから、有難い。

「先輩」
「ん?」
「ハグしてもいいっすか?」
「え?」
「一瞬なんで」
「……っ」

闘魂注入とばかりに、ぎゅっと抱き締められた。

「朝からラブラブだね~」
「あっ、天野先輩、北島先輩」
「見送りに来たけど、うちら不要だったね~」
「ほ~んとっ」
「っっ」

ちーちゃんとさっちゃんの本試験は来週らしい。
大学によって日程が違うから、昨日の放課後にルーナで決起会をしたのが最後だと思ってたのに。

2人で密かに応援しに朝早くから来てくれたようだ。

「雫、ファイトだよっ」
「頑張って!」
「先輩、気合っすよ」
「みんな、ありがと。行ってきます」

3人に見送られ、試験会場へと向かった。



さすが、国立医科歯科大学のホームキャンパス。
オープンキャンパスも含めて何度も来てるけど、やっぱり今日は異質な感じ。

正門をくぐった先は、神聖な場所だと思わせるほど張り詰めた空気を纏う。
同じ方向に歩いて行く受験生と思われる人々の顔が皆強張っていて。

緊張していなかった雫でさえ、震えあがるほどの威圧感を感じた。

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