Good day ! 2
「ちょっと野中さん。調子狂うんですけど…。いつもの大人の余裕はどうしたんですか?まるでラブレターを渡せない中学生みたいですよ?」
「ラ、ラブレター?!お前、何を…」
「だって迷ってるんでしょ?そこに書いてあるアドレスにメールを送るかどうか。あ、もしや、いっそのこと電話しようと?」
「ババババカ!でで、電話なんてそんな…」

漫画に描いてあるような焦り方をする野中に、思わず伊沢は苦笑いする。

「じゃあメールでいいんじゃないですか?」
「そ、そうだな。なんて書けばいい?」
「それはズバリ、好きですって」

すると野中は絶句して、ガタッと椅子を揺らしながら仰け反る。

「お、お、お前、何を…」
「あれ?図星ですか?一目惚れなんですねえ」
「ち、ち、違うって!」

こんな野中さんは初めて見るなと、伊沢はもはや冷静に観察していた。

「じゃあ『ご搭乗ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております』ってだけ書いて送ったらどうですか?そこで返事が来るか、もし来たらなんて書いてあるか、そこからまた考えましょうよ」

すると野中は、うんうんと何度も頷いた。

「そうだな、そうするよ。ありがとな、伊沢ちゃん」

背筋に寒気を感じながら伊沢が頷くと、野中は照れ笑いを浮かべて立ち上がり、そそくさと去っていった。
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