朝1番に福と富と寿を起こして
その返事には吹き出してしまった。
こんなにストレートに誘っているのに、私が朝人のことをデートに誘わないと思っているくらいに私はそういう風に見られていないらしい。



「そうそう!デートの練習!!」



今日はもうそういうことでもいいやと思ってしまった。
少しでも私を女として見てもらいたいから。
定食屋、“朝1番”の娘ではなく女として見てもらいたかった。
だからまずはどんな理由でのデートでもいい。



そう自分に言い聞かせると、朝人が少し悩んだ様子になった。
なんだか断ってきそうな様子に見えたので、最終兵器のコレを持ち上げた。



「お握り作ってきたよ?食べる?」



「はあ・・・?
昨日はもう作りたくないって・・・。」



「うん、もう“朝1番”で料理は作らないよ!!
だから2階でお握り作って持ってきた!!」



頭にハテナマークが浮かびまくっているような顔をしている朝人の前で、持ち上げていたお握りが入った袋をまた下に下ろした。



「お握りだけじゃ連れていってくれないか。
もっと他にもちゃんと作ってくれば良かった。
朝4時に起きて化粧したり髪の毛やってたりしたら、すぐに5時になっちゃって。
朝人の朝1番に起こしに来たかったからお握りだけになっちゃった。」



「いや、いいよ。デートの練習するよ。
千寿子の飯が食えるならお握りでも何でもいい。
準備するからちょっと待ってろ、入ってていいから。」



「そのままでいいよ!」



そっちの方が私にとっては朝人らしいのでそう言うと、朝人は怒った顔になった。



「いくら練習だとしてもこんな格好で行くかよ。
練習だとしてもデートなんだろ?
それも俺の誕生日に・・・。
このままでいいってなんだよ・・・。」
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