旅の終わりは  2人連れ


 勢いで更に続けた。
 「今日はどちらへ?」
 「今日は動物園と富良野に行って、そのあと帯広に行きます。」
 帯広と聞いてまたまた胸が高鳴る。

 「僕は動物園には行かないけれど、美瑛と富良野を散策して帯広まで行く予定なんです。」
 「じゃ、向こうでまた会えるといいですね。」

 またまた笑顔で答えてくれた。
 俺は喜びで天にも昇る気持ちで聞いていた。

  
 宿泊した旭川のホテルでチェックアウト前のひとこまだった。この時には俺はまだ花菜(はな)の名前を知らなかった。
 
 チェックアウトしてホテルから近くのバス停まで2人並んで歩き、花菜(はな)は動物園行のバスに乗るのでひとまずそこで別れて、俺は旭川駅に向かった。ただ俺の頭の中は「失敗したなー」と残念な気持ちでいっぱいだった。と言うのは最初は俺も動物園に行く予定だったのをやめて美瑛に行くことにしていたからなのだ。予定を変えなければ花菜(あのひと)と一緒に行けたのに…。 
 

 ところで俺は初めての北海道を1人旅している最中なのだ。そして花菜も同じく1人旅をしているところで、出発した羽田から函館、札幌と行く先々あちこちで何度も出会っていたのだった。まったくの見ず知らずの俺たち2人なんだが、不思議なことに同じ日程で同じ経路で旅をしていた。本当に偶然の度重なる出会いだったのだ。
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