鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

「試着を理由に専属契約しているのですから、仕事上の関係と割り切れば、仕事用の連絡先で十分です」
「仕事用の連絡なら、秘書の三井に全て任せている」
「……」
「こうやって食事することも、俺の自宅に呼ぶことも三井を通して欲しいならそうするが、奴は仕事人間だ。自分が対応している仕事は必ずチェックするぞ」
「……どういう意味ですか?」
「試着と言ってもただ単に見ているわけじゃないのは分かっているだろ。俺は必ずイメージしたモノを記録として残している」
「……」
「要するに、お前の体を他の男に見られてもいいのか?ということだ」
「っ……」
「まぁ、他人が見たところで、顔自体は描いてないから誰だか分からないだろうが、三井を通すとなると必然的にアレを見せることになるだろうな」

社長には社長の考えがあるようだ。
ただ単に、面白がって職場に来ているのだと思っていたのに。
こんな風にちゃんと女性扱いされたら、変に勘違いしそう。
社長の意外な一面を垣間見た気がした。



高級しゃぶしゃぶ専門店で夕食を済ませ、社長のご自宅へ向かっているとばかり思っていたら…。

「わぁ~っ、凄い綺麗ですねぇ~!」

都心から少し離れた場所にある小さな公園。
けれど、その公園自体がイルミネーションとして、煌びやかな幻想的な世界を作り出している。

木々に付けられた電飾、遊歩道をライトアップする灯り。
それと、地上から夜空へと放たれる七色のレーザー光があまりにも魅惑的で。

「たまにはこういうのもいいだろ」
「……意外と、ロマンチストなんですね」
「意外は余計だ」
「フフフッ、照れてる」
「なっ、……無駄口叩くなら帰るぞ」

踵を返し、駐車場へと戻ろうとした社長のコートをそっと掴んだ。

「……もう少しだけ」

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