鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
そなたほど、好もしい女子に会うたことがない

十二月も下旬に差し掛かると、どの部署も鬼のように慌ただしく。
栞那の部署は細かな修正依頼に追われている。

忙しい業務に追われ、いちいちシステム部に修正依頼を出すのが面倒だという人も少なくなくて。
ちょこっと齧ったくらいの知識で、元の設定に支障を来すほどに勝手に変更されることもしばしば。
結果、緊急性の高い修正依頼が後を絶たない。

「部長、お昼まだですよね?俺、何か買って来ましょうか」
「あーんー……ごめん、食べる暇ないから、気にしなくていいよ。手が空いたら適当に食べるから」
「……分かりました」
「山下くん、ありがとうね」
「……いえ」

部下に気を遣わせてしまった。
けれど、技術的にも時間的にも他の人に任せてられない。
もう少し時間に余裕があったら、山下くんにも割り振れるのに。

今朝出勤前に寄ったコンビニで買ったチョコレートを口に放り込み、キーボードを無心で叩く。



十二月二十五日。
クリスマスを迎え、少しずつ作業にも目途がつき始めた。

というのも、元々ズバッとした物言いの国分さんが、無理な修正依頼を出して来る人相手に『勝手に仕様変更しといて、丸投げするのはマナー違反です!』だとか『成海部長だから処理できるんですよ?外注システム業者じゃ、もっと日数無いと無理なのご存知ですよね?!』だとか、ピシャっとばっさりと言ってくれているからだ。

一応、私も厳しく言い返しはしているが、作業に追われ対応しきれないのを国分さんがフォローしてくれている。

「国分さん、本当にありがとうね」
「当然のことですよ。あんな無謀な依頼、オンプレ(サーバーやデータベースなどの情報システムを自社で全て管理・運用すること)だから出来ることであって、外注だったら絶対不可能ですから」

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