鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される


「今日はデート、よかったの?」
「デート?……しないですよ、デートだなんて」
「え?」
「ボーイフレンドと言っても、束縛するような男性は無理なので、ときめきも求めていませんし」
「……そ、そうなんだね」
「ただ、……子供は欲しいなぁって思いますけどね」
「子供かぁ…」
「部長はどうなんですか?」
「どうって?」
「社長と、……その後、少しは進展したんですか?」
「ないない、元々、そういう関係性じゃないんだけど、最近忙しいみたいだし」

二十一時に退社し、国分さんと近場の居酒屋で夕食がてらお酒を飲んでいる。
相変わらず恋愛には興味のない国分さんははっきりとした物言いだから、あざとい女の子に比べて会話し易い。
何年も男性社会で生き抜いて来たからなのか、キャピキャピしているOLとは会話が合わない栞那は、素の自分を曝け出せる気がした。

「でも、告られたら嬉しいんじゃないんですか?」
「………う~ん、どうだろ」

栞那は生ビールをごくっと喉に流し込み、たこわさをつまむ。

「杉山くんが盲腸で入院した時、私KICKSの担当したでしょ」
「あー、あの爽やかなイケメン営業マンの会社ですか?」
「ん、彼ね、元彼なの」
「えっ?」
「仕事自体は普通にこなしたんだけどさ。元々ちょっと嫌な別れ方したってのもあって、最終日に仲直りっていうのかな、お酒に誘われて」
「……はい」
「で、行った先の料亭で襲われて」
「は?」
「まぁ、未遂だったんだけど。……その時、たまたま同じ料亭にいた社長に助けて貰ったんだよね」
「うそっ!少女漫画みたい!」
「だよね~」
「それで?その後、どうなったんですか?」
「うん、……社長が先方と話をつけてくれて、今後私と関わらないことを前提に契約は続行することになったの」
「あ、いや、仕事の話じゃなくて、社長との関係ですよ」
「……あ、うん」

国分さんは楽しそうに前のめりになった。

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