クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
広大。2人の時は、いつもそう呼んでるんだ。
胸がぎゅと締め付けられる。
少し歩いてから、
「時東さん。私は大丈夫ですから、武郷さんと車で帰ってください」
部下の前では、一緒に帰りたくても、帰れなかったかもしれない。
「どうして?また会えるし、わざわざ一緒に帰る必要なんてないだろ?」

また会える・・・そうか、婚約者ってことは、家でも会えるってことなのか・・・
はぁ・・・落ち込む真実を突きつけられて、疲れがどっと出るよ・・・
「そうですよね」
取りあえず、今は2人一緒に帰る時間を大切にしよう。
初めて一緒に帰る、駅までの道のり。
もっと長ければいいのに。

「帰ってから何か作るの面倒だな・・・一緒に軽く食事しようか」
「えっ、えっと・・・」
武郷さんの事が頭にチラついた。
「嫌ならいいんだけど」
嫌なわけない。少しでも一緒に過ごせるなら・・・
「嫌じゃないです」
「じゃあ、駅の近くにオムライスの美味しいお店が出来たらしいから、そこに行こう」
「はいっ!」

男の人と2人で食事なんて、学生の時以来かも・・・それも相手は時東さん。
嬉しさのあまり、武郷さんの事は、どこかに行ってしまってた。
< 11 / 115 >

この作品をシェア

pagetop