クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「そろそろ行こうか」
声が掛かり、時東さんと車で税理士法人に向かった。
「少しは息抜きになるだろ?」
「はい。外出すると、目の前に山積みされている仕事が、見えないですから」
「山積みになるほど、仕事させてるとは思ってないけど」
「それは・・・」
「もう少し視野を広げないとな。いかに無駄な作業を無くすかだ」
「・・・はい」
自分でも分かってる。
それだけに、時東さんの言葉は、胸に突き刺さる。

「決算はどうだった?2年目といっても、ほぼ初めてのようなもんだからな。大変か?」
「大変です。でも、自分のスキルが上がるのが実感出来て、楽しいとも思うんです」
「そうか。上出来だ」
時東さんが、頬笑みながら褒めてくれた。

「笠間さんは真っ直ぐだし、コツコツと自分の力に出来るから、あとは自信を持てばいい」
「自信は無いですけど・・・」
「俺が保証する。大丈夫だから」
優しく穏やかな声で、言われた言葉が胸に響く。
ズルいっ・・・厳しい言葉の後に、優しい言葉で褒めるなんて、ズル過ぎですよ・・・

税理士法人では、次年度で新しく改正される税制について、担当税理士と打ち合わせしていた。
「凄いですね時東さん。完璧ですし、僕達が予想することを全て答えも考えてるなんて」
「一応、これでも税理士ですから」
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