クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「碧、こっち」
2階は来客室兼会議室が2部屋、そして書庫があって、広大さんは来客室で黙々とチェックをしている。
「確定申告の時期、こんな感じなんだ」
あたふたしている私とは比べものにはならない仕事量。
広大さん、やっぱり凄いなぁ・・・
「俺はただ働きだけどな。2人の時間を割いてるんだ。終わったら父さんにご馳走してもらおうな。ちょっと下に行ってくる」
私の頭を撫でると、会議室を出て行った。

しばらくすると、さっきまで静かだった1階がザワついていた。
心配になって下に行くと、
「父さん!もう直ぐ救急車が来るから、しっかりしろよ!」
広大さんの声が、奥の所長室から聞こえる。
「どうしたんですか?」
慌てて私が近くの職員さんに聞くと、
「所長が倒れていて」
答えたその人は震えていた。
救急車が到着して、お父さんが運ばれ、
「碧!俺は父さんに着いていく。病院に着いたら連絡するから待ってて」
私は頷き、お父さんと広大さんを見送った。

後から連絡が入り、幸い脳も心臓も異常が見つからず、睡眠不足と栄養不足、過度の疲労が蓄積して、引き起こしたものだろうと診断が出た。
ただ、血圧が高く、しばらくは安静にするように言われたらしい。
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