クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「ねぇ、広大君の昔の好きな人の話、聞きたくない?」
「えっ?」
「あっ、好きなら聞かない方がいいか」
「いえ、別に」
「好きじゃなければ聞いても平気だよね」
大倉さんは、涼し気な顔で私に話し出した。
「広大君は、ずっと俺の彼女の事が好きだったんだ。その彼女も、もう辞めちゃったけど」
「へ、へぇ、そうだったんですね」
「桜子っていって、桜子も広大君のこと、可愛がってたからなぁ。俺が付き合わなかったら、桜子と広大君はきっと・・・」

桜子さん・・・
写真で腕を組んでいた人・・・
昔の話とはいえ、顔が強ばる。
「やっぱり気になる?好きなんでしょ、広大君のこと」
「え、えっと・・・」
「でも、広大君はもう傍にいないよ」
獲物を捕らえるような瞳に見つめられて、身動きが取れなかった。
「笠間さん、お待たせ!」
「あっ、はい、大倉さん、お疲れ様でした」
慌ててバッグを持って、北川さんのところに駆け寄った。

「笠間さん、まさかと思うけど、大倉さんの事・・・」
「そんなわけないですよ」
「だよね。でも、時東さんとは離れてるし、大倉さんの方が、女性の扱い上手いから、気持ち揺らがないように気をつけてね」

私の気持ちが揺らぐはずがない。だって、広大さんで満たされているから。
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