クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
【すれ違いは別れを招く】
最近、金曜日は仕事が遅くなるからと、土曜日に広大さんの家に行くようになった。
「大倉さんとは上手くやれてる?」
「そうですね・・・明るい人ですし、皆、大倉さんとの関係は上手くいってますね」
「何か言われたりしてない?」
この間言われた事・・・でも言えば、大倉さんと広大さんの仲はより一層悪くなる。
それに昔の話だし・・・
「いえ、何も」
私は桜子さんのことは、胸に秘めた。

段々、広大さんと離れて暮らす事にも慣れて来た。
でも、寂しくなった時の心細さは、それ以上になる。
不安で傍に居て欲しい時に、優しく微笑む姿も、温もりを感じられない。

「広大さん・・・」
せめて一緒にいる間は、広大さんの温もりを感じたくて、抱きしめた。
広大さんはただ黙って、私の頭を撫でている。
本当は、今すぐにでも会社を辞めて、傍に居たい。
ずっとこうして甘えていたい・・・
安心したのか、そのまま私は眠りについていた。

目が覚めると朝で、広大さんは隣に居なかった。
「す、すみません。広大さん」
リビングに行くと、広大さんはスーツを来ている。
「あっ、碧。父さんから連絡があって、昔働いていた人の事務所に出掛ける事になったんだ。電車で帰れる?」
「大丈夫です。辞めた人でも交流があるんですね」
「父さんは辞めたからといって、疎遠にならないから交流が広くてね。桜子さんて呼んでた税理士の人だ」
桜子さん・・・大倉さんが話していた、広大さんが好きだった人・・・
「碧?どうかした?」
「な、何でもありません」
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