クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「ねぇ、笠間さん。広大君とは本当のところ、どうなの?」
もう、隠しきれないか・・・言っても大丈夫だよね。
「北川さんしか知らないんですけど、付き合ってます」
「やっぱりね。当たってた」
「大倉さんは、どうして、桜子さんと別れたんですか?」
「その頃の桜子は、俺より自分のスキルを上げる方を優先したんだ」
「そうなんですか・・・」
きっと、大倉さんが浮気したんだろうと勝手に決めつけていた。
「広大君みたいに頼りがいがあれば、桜子は言うこと聞いてたのかもね」

広大さんは桜子さんに会って、心が揺れないのかな・・・
会ったら、昔の気持ちが沸き起こるとか・・・

「俺、笠間さんみたいなタイプの女性は、初めてなんだよね」
「えっ?」
大倉さんは立ち止まり、私を見つめた。
「俺じゃダメかな」
真剣な眼差しに目が離せない。
「あ、あのー」
「なーんて、笠間さんって優しいから、すぐ男に騙されちゃうから気を付けなよ」
「も、もぉー、止めてくださいよ!」
「ははっ!可愛い」
はぁー、びっくりした。どうしようかと思った。

恥ずかしくて、下を向いて歩いていた時、
「危ないっ!」
バイクが近づいてるのに気づかず、大倉さんに手をひっぱられ、抱き寄せられた。
「す、すみません」
「危なかった・・・心配かけるなよ」
大倉さんは、私を強く抱きしめる。
どうしよう・・・広大さん以外の人に抱きしめられるなんて・・・
「あっ、ありがとうございます」
お礼を言って離れようとしたけど、腕がほどけない。
「あ、あの・・・もう大丈夫ですから」
それでも、腕は離れなかった。
「大倉さん?」
「あっ、ごめん、良かったよ。俺、こっちに寄る所があるから、気を付けて帰れよ」
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