クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
広大さん、何だか嬉しそうに見える。
「いつもゆっくり出来なくて、本当にすまない」
私に軽くキスをすると、鞄を持って慌てて出て行った。
胸が締め付けられるようで苦しい。
会えない日も続いて、話すのも前よりは少なくなって来た。
広大さんは平気なのかなぁ・・・
部屋を片付けて、家を後にした。

8月に入り、四半期決算も終盤で、報告書のチェックで監査人に呼ばれた。
「大倉さん、今、お時間いいですか?」
「うん、どうしたの?」
「今、監査でチェックが入って、ここ修正になりました。すみません、私が入力した所です」
「俺のチェック漏れだな。気にすんな。一気に修正するぞ」
「はい!」

1つの修正が皆に影響する。
大倉さんは全員に指示して、直ぐに修正し、監査人へ報告しに行ってくれた。

ようやくひと段落して、改めて大倉さんにお礼を言いに行った。
「大倉さん。今日はありがとうございます」
「どうしてお礼を言うの?一生懸命しての事だからね。俺って、そんな冷血に見える?」
「いえ、そうじゃないんですけど。来たばかりなのに、ご迷惑お掛けしてばかりで」
「責任を負うのが俺の仕事だから、もう気にしないで。さぁ、帰ろうか」
大倉さんは部屋の鍵を閉めて、2人は駅に向かった。
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