クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
ごはんも食べずに、会いに来てくれたんだろうなぁ。
冷蔵庫の中にある物で軽食を作り、部屋を片付けて、シャワーを浴びた。
何だかあまりに色々な事が起りすぎて、昨日からの事が夢見たい。
ソファに座っていると、静かに時が過ぎて行った。

「碧、碧・・・」
目を開けると、広大さんが私を覗き込んでいた。
「す、すみません。寝てしまって」
「ありがとう。片付けてくれてご飯まで。もういただいて、片付けたから」
テーブルの上には、ルイボスティーが入ったコップが2つ並んでいた。
「碧。大切な話があるんだ」

何だろう。またしばらく会えないって事かな。
せっかく広大さんとの距離が縮んでも、また離れてしまう。
仕方ない。今度は今回のことにならないようにすればいい。

「碧に今のところで頑張れって言ったけど、やっぱり撤回したい。碧が良かったら、俺と一緒に仕事をしないか?」
全く違う言葉にびっくりした。
「それは・・・税理士事務所でって事ですか?」
「そうだ。俺を手伝って欲しい。でもそれは、一緒に住んで、今の会社を退職するって事だ」

もう私の答えは、とっくに決まっている。
「広大さんの傍で、お仕事させてください。そして、身の回りのお世話も・・・」
嬉しい。ずっと傍にいるなんて・・・
「本当は、指輪を用意して、お洒落にプロポーズしたかったんだが・・・」
えっ?今、何て・・・

「ずっと聞きたかったんだ。俺は碧を離さない。碧はこんな俺でいいのか?」
「もちろんです!」
「俺と結婚して欲しい。妻として、ずっと俺の隣に居て欲しいんだ」
広大さんのお嫁さんに・・・私は胸が熱くなり、涙が溢れ出した。
「こんな・・・こんな私で良かったら、お願いします」
「ありがとう。嬉しいよ」
広大さんの胸に顔を埋めると、優しく抱きしめられた。
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