クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
ぶ、分厚い。中を開くと、蛍光ペンで色づけされ、何度もめくったのか、ヨレヨレになっている。
凄い・・・何聞いても教えてくれる裏側での努力が、その本を見ても分かる。
時間が経つのを待つ間、本が色づけされているところに目を通した。
横にはメモ書きもある。

会計と税務は違うんだと教えてくれたけど、その域まで辿り着くまではまだまだ。
もっと、広大さんに教えて欲しかったんだけど・・・
こっちの本も同じだ。
パラパラとめくると、しおりかと思ったら、1枚の写真が挟まっていた。
これは、あの時の・・・
遊園地で、観覧車の中で取った写真だ。裏には、『親愛なる碧』と書いてあった。

「こらっ・・・勝手に見るなよ」
本を横にずらして、広大さんを見ると目を覚ましていた。
「すみません。起こしちゃって」
「いや。少しでも眠れてすっきりしたよ」
「ゆっくり休んでください。私は片付けしますから」
「せっかく碧が来たんだ。2人でゆっくり過ごしたい」
「ダメです!私が片付ける間、ゆっくり休んでください。さぁ、ベッドに行きましょう」
「・・・それって、俺を誘ってるの?」

いつもの広大さんの口調に、凄く嬉しくなった。
「ち、違います!もぉーっ、今言うこと聞かないと、これからしませんから!」
「別に俺はいいけど。碧、我慢出来るのか?」
「それは・・・もー、意地悪言わないで下さい!とにかく、ゆっくりして欲しいんです!」
「分かってるよ。ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えるとして」
起き上がって、両手で私の頬を覆うと、唇を貪った。
「これぐらいはいいだろ?じゃあ、休んでくるよ」
そう言って、頭を撫でて、寝室に入って行った。
やっぱり広大さんには敵わない。
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