秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。
 彼女の吐息が聞こえる。僕の頭は真っ白になっていた。何も考えられなかった。ただただ彼女を見ていた。

 ぼうっとなったまま、綺麗だと思った。彼女はとてつもなく綺麗だった。その感覚は現地味を欠いて、まるで夢の中のようだ。

「はっ。ううっ」

 蝉の声と彼女のため息。投げ出された白い素足がビクッと動く。白い太ももが、差し込まれた手を挟んだまま、ぎゅっと内側に窄まる。

「…っ」

 声にならない息が、彼女の口からもれた。しばらくそのまま動かない。そこに突っ立ったままの僕は彼女と見つめ合う。やがてその唇がこう言った。ささやくような声だった。

「内緒だよ。誰にも言っちゃだめ」
 
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