秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。

君にキスを

 彼女の斜め前にひざまづき、僕の手で秘密の奉仕する。それはあまりにも突拍子もなくて現実感を欠いていた。当時の自分が、そんな破廉恥な奉仕を嬉しく思っていたのかどうなのかよくわからない。ただ僕は、彼女に喜んで欲しかった。それだけは確かだ。笑わない彼女の笑顔を見たかった。でも笑ってくれたのは「エッチ」となじられたあの時だけだったと思う。

 ある日の昼下がりに、いつもの位置でひざまづこうとしたら、横に立つように指示された。いつものように手首を掴まれ、その手を太もものあいだ…ではなくて、彼女の胸に、白い服の上から、沙耶さんの胸のふくらみに押しつけられた。

「触って。光輝くん」

 彼女の別の手はめくったスカートの中にあり、妖しくうごめいている。

 ごくっと唾を飲み込み、僕はおずおずと手を動かし始める。柔らかい手触りがした。柔らかで丸い。
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