秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。
 だから…だから僕は、見つめてくる瞳の力が弱まったこのとき、彼女の胸のふくらみを揉みながら、甘い息が漏れてくる唇に引き寄せられるように、顔を近づけ、その唇に自分の唇を押しつけた。

 閉じられていたまぶたが開く。間近で見る瞳はとても綺麗で深い色で、気圧された僕は押しつけていた唇を離した。

「だめよ」

 僕の目を覗き込み、彼女がささやいた。

 何がだめなんだろう。

 もう一度、キスをする。

「だめよ。わたしなんか…」

 それは…どういうこと?意味がわからなかった。もう一度、唇を寄せたら、横を向いてしまった。

 僕じゃ、だめなのか。そうなんだ。でも。

 白い胸をすっぽり包んでいる僕の手は拒絶されていない。キスのあいだ中断していた、ふくらみを揉むのを再開しても、だめとは言われない。

 どうしてなの。なぜなの。その理由を聞きたいのに聞けなかった。
< 24 / 50 >

この作品をシェア

pagetop