シークレット・ブルー 〜結ばれてはいけない私たち〜

――どんなに愛し合っても、僕たちは決して結ばれない。

◆◇◆

「珍しいね、蒼があたしに用事なんて」

 大学の中庭にあるベンチに座っていた僕は、杏香をそのとなりに促した。
 傍らに置いていた、温かいカフェオレのペットボトル二本のうち、片方を彼女に差し出す。

「はい、これ」
「ありがと。気が利く~」

 杏香はうれしそうにペットボトルを受け取って、胸のあたりでぎゅっと抱きしめる仕草をしてから、さっそくキャップを捻った。

「僕がなんのために呼び出したか、杏香なら予想つくんじゃない?」
 
 ひと口飲んだ後、ペットボトルの飲み口についた赤いリップを指先で拭いながら、彼女がうなずく。

「そうだね。あんたとも付き合い長いしね。碧のこと、相談したいの?」
「さすが杏香だ。碧の親友だけある」

 杏香はいつも勘がよく、話が早くて助かっている。

「つい最近、碧とも同じような話したわ。……親友か。碧がそう思ってくれてるかどうかはわかんないけど」

 思い出したようにつぶやいたあと、彼女が僕の言葉をなぞりながらいたずらっぽく笑う。

「思ってるよ。碧は、いつも杏香に感謝してる。大切な親友だけど、恥ずかしいから直接は言えないんだって」

 引っ込み思案で友達の少ない碧にとって、杏香はもっとも大切で信頼できる友人だ。
 つまり親友。碧からも、「そういえば杏香がね」とよく聞く。

「なにそれ、直接言ってよ。うれしいから」

 碧の性格上、普段はそういうことを本人に言っていないのだろう。
 ことのほかうれしそうに杏香が微笑んだ。
< 5 / 22 >

この作品をシェア

pagetop