「好き」と言わない選択肢
「ああ、俺もそう思う。野山さんて、社内一の美人て噂の人だろ? 社内の奴が何人もが振られたって話だぞ。うちの細木部長も惨敗だったて話じゃん」

 多分だが第一企画部の人達だろう。聞きたくもない、くだらない話にうんざりして溜息がもれる。

「別に、興味ないよ」

 木島遥の面倒臭そうな声が聞こえた。木島遥(きじまはるか)、株式会社GOの第一企画部。私より二年先輩らしい。一度研修で一緒になった事がある。

「またまた、木島、総務の女の子にも告られたって噂聞いたぞ」

「ああ よく知ってるな」


 木島遥の声に、周りにいる男達がため息をついたのが分かる。

「どうするんだよ?」


「知らねえよ。そのうち飽きるんじゃねえの」

「木島さぁ。自分に落とせない女は居ないとか思ってんじゃねえの?」

「どうだろな?」

「なんだよそれ? 自信ありげだな。じゃあ、賭けしねえ? 木島に落とせない女がいるか?」

「ばかじゃねえの?」

「まあな、お前に言い寄られりゃ、悪い気はしないだろうな。木島に興味のない女はいなのかよ?」

「なあ、今年入社した、第三企画部の橋本って子はどうよ?」

 チッ、思わず舌打ちした。アホな男どもに、名前を出されて、ムカムカして来た。


「あの、美人だけど、愛想のない子だろ。仕事の事以外は、ほとんど話しないらしいぞ。確かに、木島に興味ないかもしれないよな」

「バカか? だいたい誰だよそれ?」

 自分の名前され知らない人。知らないなら知らないままでいて欲しい。それが私の本音だ。

「さすがだな。自分から興味持つ必要なんてないもんな。それじゃあ、俺が声、かけちゃおうかな?」

「岡田じゃ、無理だろ」

「なんだよ。分かんねえだろ」

 岡田の不貞腐れた声をかぶせるように、笑い声が響いた。うるさい。


「あはははっ」

 笑い声とともに、第一企画部の集団は去っていった。
< 2 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop