「好き」と言わない選択肢
私の選択肢
 ~橋本咲音~

「おはようございます。ご迷惑おかけして、申し訳あしりませんでした」

「橋本さん。大丈夫? 心配したのよ。寝不足になるほど、仕事に夢中になっちゃダメなんだからね?」

「すみません。以後気つけます」

 数日間休んだ後、仕事に復帰した私に、皆が拍手をくれた。


「CM凄くいい仕上りになったらしいよ。事前の注文も予定の倍近い量で、生産部が慌ててるわよ」

 里奈が嬉しそうに、私の手を取った。

 発売日まで、あと一週間……


「皆、ちょっといいかしら?」

 岸本部長の声に、視線が集まる。


「橋本さんだけど、来週いっぱいで、大阪に赴任する事になったわ。」

「えっ こん急に? いくら発売日が過ぎても、まだ、忙しいのに……」

「今回の実績が評価されたのよ。急ぎで橋本さんの手が必要なみたいなの……」

「そんなぁ……」

 里奈の顔が歪んできた。

「お世話になりました。後の事、よろしくお願いします」

「相変わらず、クールなんだから……」

 里奈の言葉に皆が笑った。
 私だって本当は、もっと皆に感謝の言葉を伝えたい。
 でも、これ以上、大切な仕事の仲間の心に残りたくない。


「これも、私が選んだ選択です。あと、数日ですが、精一杯がんばります」

 私は、深々と頭を下げた。

「本当に硬いんだから。こちらこそ、色々とありがとう」

 皆が、銘々に声をかけてくれた。

 ここで、仕事が出来た事は幸せだった。特に、sukkyの企画に意見を出し合えた時間は本当に楽しかった。
 皆さん、こんな私で、ごめんなさい……

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