ラブ・ジェネレーション

『少しぐらい俺に時間をくれてもいいだろ、たまにはお茶でもしないか』

まただと思った、こんな誘いを断ることにずっと苦心してきた、最近はありのままに打ち明けた方が気が楽だと感じ始めてもいた。

『嬉しいけど、お金を持ってないから付き合えないよ』
誰にも見せられない、私の財布の中身は小学生並みだ、

翔琉の同情するような目が嫌だった、女友達と気軽に遊べないのも同じ理由、私だって皆んなと同じようにカラオケに行ったり流行のケーキを食べたりしたい、でもお母さんの苦労も知ってるし、もう高校生だからお小遣いを増やしてなんて我儘が言えるわけがない、自分で稼ごうにもアルバイトは学校で禁止されていた。

『そういう付き合いがしたいのなら私は無理、気にしないから他の子と行ってくれていいよ』

唇をギュッと噛み締め、俯いたまま捻り出すように断りの言葉を口にした。
自分が悪いわけじゃないけど実際にお金を使う付き合いはできないし、翔琉がそんな私に合わせられないのならこれ以上付き合っていても意味がない。
それで嫌われても仕方がないと思うし翔琉を恨んだりはしない。

『カフェはやめた!」

えっ、意外な言葉だった、
早々に諦めかけていた恋の行方に、うっすらと一本の道が伸びていくのを感じた、

『俺は結衣とゆっくり話がしたいだけだから時間だけくれよ』

『お喋りぐらいならいつでも付き合うよ』

とても今時の高校生の交際とは思えない、私がそう思うのだから翔琉は尚更だろう。不満はあったと思う、それでも我慢して私に合わせてくれる、それがちょっぴり嬉しくて、もう少し彼と付き合ってみたい気にさせてくれた。

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