ラブ・ジェネレーション
5.幸か不幸か


大学卒業後、私は市内のデザイン会社に就職、翔琉は大手の商社だった、
互いに新しい環境で忙しくて、会える時間は週末の僅かな時間に限られてしまう。

働きだして一月にも満たない頃、
何の前触れもなく、突然職場の先輩に告白された、
三つ年上の大人の雰囲気を纏った爽やか系男子、翔琉とは少し違うタイプ、何事も頼れる存在で私を優しくリードしてくれる。

「彼氏がいます」そう断っても、
「すぐに返事をくれなくていい、長い目で見てじっくり考えてよ」

積極的に言い寄るわけでもなく、一定の距離を保って紳士的に優しく振る舞う姿に好感度は増していた。
先輩には自信があったのだろう、彼氏よりも自分の方が男として魅力があると、十分比べてから判断して欲しいという意味だった。

翔琉には黙っていた、まだ話すほど気持ちは揺らいでなかったし、翔琉以外の男性と付き合う気持ちも今は持っていなかった。


瞬く間に半年ばかりが過ぎた頃、突然降って湧いたように翔琉に転勤の話が持ち上がった、

「アメリカ?」

翔琉の会社は世界を股にかける総合商社、出世するためには転勤は当たり前、日本国内に留まらず世界に出なければ商社マンとしての将来はしれていた、

「新入社員から二名、希望を募っている、結衣はどう思う」

行って欲しくないに決まっている、、でも、

「私の意見より、翔琉はどうしたいの?」

「俺は、、チャンスを掴みたい、世界を相手に仕事をするのが夢だったんだ」

遥か遠くの空を眺め、手を伸ばせば届きそうな夢を語る翔琉、そのキラキラ輝く瞳を私は寂しく見つめていた、

そう思うなら、、もう私に聞くまでもないじゃない、、

終わりかな……、

おばさんの言葉を思い出していた、
『夢を追いかける男にとって女は足手纏いでしかない』、今また私も同じ気持ちでいた、
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