【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~

本編

 ようやく想いを通じ合わせたフレデリカとシュトラウス。
 これまで一緒にいられなかった時間を埋めるかのように、二人で過ごすことが増えていた。
 多忙な二人ではあるが、なんとか予定を合わせては、格式の高い劇場から街の喫茶店まで、色々なところへ出かけた。
 中でも、時間をともにしやすかったのは夜間だ。
 執務室に缶詰めになることもあるシュトラウスだが、基本的には、夜は休めるようスケジュールが組まれている。
 それは、王女であるフレデリカも同じことで。
 シュトラウスの予告通り、二人は頻繁に夜を共にしていた。



 シュトラウスの離れ、彼のベッドにて。
 彼の愛を受け止めたばかりのフレデリカは、毛布の下でくったりとしていた。
 シュトラウスは優しいがとても情熱的で、フレデリカなど、彼に身を任せることしかできない。

「フリッカ。水を持ってきたよ」

 寝室のドアが開き、シュトラウスが水差しとグラスを持って戻ってきた。
 彼の声に反応し、フレデリカは毛布で体を隠しながらのそのそと上体を起こす。
 フレデリカはまだぽうっとしており、もうしばらくの休憩が必要だが、シュトラウスの足取りはしっかりしている。
 けれど、服は着崩していて、黒い髪も少し乱れいて……と、色香は存分に残っていた。
 先ほどまでのことを思い出し、フレデリカはついつい顔を背けてしまう。

「……どこか痛むのか?」
「う、ううん。水、ありがとう」
「もし、無理をさせているようだったら言ってくれ。きみを傷つけたくない」
「んっ……んんん……。だいじょぶ、です」
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