【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 大好きな彼を信頼し、身を任せる時間は、フレデリカにとっても幸福なもので……。
 そこまで考えると、色々なあれそれを鮮明に思い出しそうになり、フレデリカはぶんぶんと首をふった。

「フリッカ……? 本当に大丈夫か? すまない、無理をさせすぎた。次からはもう少し……」
「えっ、あ、違う! 違うの!」

 ハッとしたフレデリカがシュトラウスを見やれば、彼は所在なさげにグラスを持っていた。
 違うの、と繰り返しながらグラスを受け取り、ちびちびと水を口にする。

「だが……。いつもかなり疲れているように見える」
「あの、えっと……。本当に大丈夫、で……。その……。だいすき……だし、あなたに求められるのは、嬉しい、ので……。幸せだから、ふわふわしてぼうっとしちゃうだけで……。つまり、その、変に抑えたりせず、好きにしていい、です……」

 蒸気した頬に、潤んだ瞳。情事の痕跡もそのままに、精一杯に紡がれる言葉。
 そんなものが直撃したシュトラウスはといえば、

「ぐっ……」
「……シュウ? どうしたの?」
「いや……。愛しいと思っただけだよ……」

 と、額と胸を抑えながら理性をフル稼働させることになるのだった。
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