【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 そして、フレデリカとシュトラウス。
 式後の休暇もとっくにあけており、二人はそれぞれ公務に復帰している。
 結婚後の住処は自由に決めていいと王に言われていたものの、暗殺騒動があったものだから、そのあたりは後回しになっていた。
 落ち着いた頃にようやく、住処についての話が進み始め、王城敷地内の、今までシュトラウスが使っていたものとは別の離れに移り住むことが決まった。
 建物は以前よりも大きく、使用人も常駐する予定だ。
 フレデリカは城から、シュトラウスは元々使っていた離れから、引っ越しの準備をしていた。
 
 荷づくりも進み、新居へ荷物の運び入れを始める日の朝。

「シュウ。あの……」

 フレデリカが、シュトラウスの離れを訪れた。

「フリッカ? どうした?」

 今日は、昼前に新居で合流する予定だった。
 突然の訪問を不思議に思いながらも、シュトラウスは彼女を自分の離れに招き入れた。
 ここに残す予定のテーブルに、彼女を誘導しようとしたのだが、フレデリカは動かない。
 玄関に立ったまま、あの、えっと、あのね、ともじもじしており、シュトラウスはそんな妻の姿に首を傾げた。

「……? なにかあったのか」

 引っ越しを前に、トラブルでも起きたのだろうか。
 心配になったシュトラウスは彼女の両肩に触れ、視線を合わせた。

「あの、ね……。引っ越し、いったん中止しなくちゃいけないかもで」
「中止?」
「うん……」
「やはりなにか問題が……?」
「んっと、問題、というか、その……」
< 181 / 183 >

この作品をシェア

pagetop