【電書化・コミカライズ】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 フレデリカが愛人を求めている。
 一部貴族のあいだに、そんな噂があった。
 麗しの第一王女に気に入られたい男たちの、願望混じりの言葉だったり、ゴシップ好きな者たちがひっそりと楽しんでいるだけだったりと、信ぴょう性に欠けるものではある。
 たしかに誇張されてはいるのだが、全くの嘘というわけでもなかった。

 シュトラウスに妹のような存在だと言い切られ、他の女性とキスする場面まで目撃して。
 危ない目に遭ったあとも、彼との距離は広がっていくばかり。
 婚約13年目にして、フレデリカは、恋する王女でいることを諦めた。
 シュトラウスから同じ気持ちを返してもらうことを、諦めた。

 いっそ、他の男性を好きになってしまいたい。

 誘拐未遂の件から1月ほど経つ頃には、そう思うようになっていた。

 フレデリカは、婚約者のいる王女として、他の男性とはしっかり線を引いてきた。
 成長してからは特に、二人きりになることもせず、フレデリカ個人として話しかけることもほとんどなく、素の姿も見せてこなかった。
 婚約したばかりの頃、シュトラウスがフレデリカを溺愛しているという話が広まったことに加えて、フレデリカのこの態度だ。
 王女は年上の婚約者一筋なのだろうと、思われていた。

 しかし、最近は――

「ねえ。それ、美味しいのかしら?」
「フ、フレデリカ王女!?」

 社交の場などで、気まぐれに男性に話しかけるようになっていた。

「驚かせてしまってごめんなさい。あんまり美味しそうに飲んでいたから、つい。ジュースみたいだけど……どこのもの?」
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