アイテム
よく見れば、黒子と傷痕が消えていた。桐山は、目尻に小さな黒子があり、顎にはスキーで転倒した時に負傷した小さな傷痕が残っていたのだが、完璧に消えている。

桐山はハッとなり、慌ててパジャマを膝下まで下ろした。長年見慣れた傷痕。右太ももの側面から膝にかけて、15センチに渡る縫い痕。

完全に消えていた!
しかも脚が逞しく引き締まっている。

長年の運動不足で、特に右足の筋肉は、かなり衰えていたのに…

男が去ってから、まだ数分しか過ぎていないのに、現実離れした現象の連続に、桐山は狼狽えながらも、全てが現実である事を実感し始めていた。

軽やかな足取りで部屋に戻る

体が信じられない程快適に動く。

頭はスッキリと冴え渡り、心地よい空腹を覚えた。

しかし桐山には、試してみなくてはならない事が山ほどあった。

アイテムの検証である。

桐山は手のひらを上に向け、(出ろ)と念じてみた。

瞬時にアイテムが出現した。

今度は(収納)と念じる。

アイテムは手に吸い込まれるように消えた。

桐山は再びハッとなり、『残』が気になった。今の作業でも使用回数は減っているのか?
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