幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 だけど、今更美桜さんの日記を見せたところで、美咲さんが落ち着くとは思えなかった。
 暗い闇の中に閉じこもってしまった美咲さんが立ち直るためには、もっと時間が必要だと。


「日記は母に渡したけど、まだ中身を読む勇気はないようです。でも、いつか向き合う日が来ると思います」

「そうだね……」

「そういうわけで、下手に母を刺激したくなくて、連絡できませんでした。悪かったと思ってます」

「もういいよ!お母さんのことが心配だったんだよね」


 私は那桜の手をぎゅっと抱きしめる。


「家族のことを思いながら、それでも私のために頑張ってくれたんでしょ?ありがとう」

「鏡花……」

「いつか那桜のお母さんにもちゃんと認めてもらいたいね。私も仲良くなりたいな」


 そう言って微笑んだら、ちゅっと唇を塞がれた。
 あまりにも不意打ちすぎるキスだった。


「っ!?」

「したくなったので」


 と、唐突すぎない!?
 誰かに見られたらどうするの!?

 ――いや、もう見られても大丈夫なんだった。でもキスを見られるのは恥ずかしい!!


「両親に前に進んで欲しい気持ちもありました。
でもそれ以上に、俺が鏡花を諦められなかったんです」

「那桜……」

「元々諦める選択肢なんてなかったけど」

「私も!」


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