幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 今回人前式を選んだのは、特に宗教がなかったというのもあるけど、私たちには「家族」が多いからというのが大きい。

 染井一家、桜花組の組員たちもみんな大切な家族だから、大切な人たちに見守られて誓いを立てたいと思った。

 だけどそんな大勢が入る会場はないので、染井の所有する別荘地の庭園で挙式を挙げることにした。
 天気が心配だったけど、穏やかな春の陽気が過ごしやすい。桜の花が咲き散る中の結婚式は、天からの恵みだとさえ思う。

 式場に向かって歩く中、那桜の両親と会った。


「親父、母さん。来てくれたんですね」
「当たり前だろう」
「……」


 お義母さんは私たちと目を合わせようとせず、ずっと俯いていた。
 私はそんな義母に一歩歩み寄る。


「お義母さん、ずっとお礼が言いたかったんです。
那桜のこと産んでくれてありがとうございます」

「……!」

「私、今とっても幸せです」


 届いたかどうかはわからないけど、それだけどうしても伝えたかった。
 ぺこりとお辞儀をし、私たちが立ち去ろうとした時。


「――那桜!」


 背後からお義母さんが呼びかける。


「那桜、体には気をつけなさい……」

「――はい、ありがとうございます」

「それから……大事にするのよ」

「もちろんです」


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