幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 私は思わず目頭が熱くなった。
 メイクが崩れてしまうからこらえたけど、とても嬉しかった。


「ねぇ那桜、私たち高校卒業したばっかだし、結婚するのはまだ早いって思ってる人たちもいると思うんだ。私なんて今日で18だし」

「そうですね」

「でも、全然後悔してないよ」


 まだまだ中には反対する声もある。
 それでも私たちは新しい未来に向かって、二人で共に歩む道を選んだ。

 この先大変なことばかりだと思うけど、那桜と一緒なら大丈夫って信じてるから。


「俺も後悔なんてしませんよ。そもそも鏡花が18になったら結婚すると決めていたので」

「それ本気だったの?」

「当たり前じゃないですか」


 そう言うと那桜は、私の耳元で囁いた。


「……一刻も早く、鏡花を俺だけのものにしたかったので」

「……っ!もう、ばか」

「てゆーか今日の鏡花、かわいすぎて誰にも見せたくないのでやっぱりこのまますっぽかしてハネムーンに行きません?」

「はあ!?何バカなこと言ってんの!?」

「俺だけ独り占めできないじゃないですか」

「前撮りで散々見たでしょ!みんな待ってるから!」

「お二人とも!?何してるんですか!?」

「「あ。」」


 ついにスタッフさんに呼ばれてしまい、「那桜のせいだよ」って目線で責める。
 なのに那桜はどこか楽しそうに笑っていた。

 全くもう!那桜ってば。

 きっとこれからもたくさん喧嘩して、その度に仲直りしていくのだろう。
 それでもずっと傍にいたいと思うのは、那桜だけだ。


「新郎新婦の入場です――」


 アナウンスの後に、ゆっくりと扉が開く。

 大嫌いなライバルから最愛の伴侶となった彼の腕につかまり、ゆっくりと歩き出す。
 大切な人たちが待つ、桜舞い散る晴天の下へ――。



fin.


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