幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
* * *
「ただいま!」
「お嬢!お帰りなさいやせ!!」
帰宅した私を一列で囲み、頭を下げて出迎えてくれるのは、強面の男たち。
すぐに一人が私の荷物を持ち、一人が私の大好きなレモネードを手渡してくれる。
「今日もご苦労様でございやした!!」
「お嬢、今日は実力テストだったそうで!結果はいかがでしたか!?」
「…………」
「お嬢?」
「その話をするんじゃなーーーーい!!!!」
思いっきり平手打ちを決める。誰かはわからない、一番近くにいた誰かに。
私の平手打ちを受けた不運なやつは「いだーーっ!!」と叫んで涙目で頬を押さえていた。
「お嬢ーーーー!!」
「なんでなのよーー!!」
「お嬢が御乱心だぁ!!」
強面の大男たちが大慌てで私を止めに入る。これはうちの日常茶飯事。
改めて、私の名は吉野鏡花。
関東の巨大勢力の極道・桜花組の娘。構成員たちからはお嬢と呼ばれている。
極道といっても、ただのヤクザではない。
桜花組は言わばカタギの極道。警察公認の組織で古くから「弱きを助け、強きを挫く」をモットーに、他の暴力団の制圧・監視、街の治安維持を大きな仕事としている。
簡単に言ってしまえば、警察では介入できないことを警察黙認の元で遂行している裏組織って感じ。