幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 那桜はすぐに私の縄を解くと、自分が着ていた制服のジャケットを私に羽織らせた。


「このバカ!!」


 なっ、いきなりバカって言った!?


「何してんですか!八重の身代わりになるなんて、バカなことを……!」

「だって、八重のこと守りたかったから!八重があんなやつらに連れて行かれるよりマシでしょ?」

「マシなわけあるかよ!!」


 那桜はそう怒鳴った直後、私の体を引き寄せて腕の中に閉じ込めた。
 那桜に抱きしめられていると理解するまで、数秒かかった。


「何すんの!?」

「鏡花に何かあったらどうするんだよ……」

「っ、那桜……」


 私のこと、心配してくれてるの……?
 なんで?敵同士なのになんで助けてくれたの?

 いつも余裕ぶってて嫌味ばっかり言うくせに。なんでちょっと震えてるの?


「……なんで那桜が私の心配するの?」


 わからない。那桜の気持ちがわからないよ。


「好きな女の心配して悪いかよ」

「す、好きな女って……」

「ここまで言わないとわからないんですか?――鏡花」


 私の目を真っ直ぐ見つめる那桜は、私をからかっているようには見えなかった。真剣だった。

 え……じゃあ、あの時言ってた好きな人って――、私のことだったの?


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