幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
那桜の長い指がするりと私の頬を撫でる。
反射的に目を瞑ってしまった。
あ、やばい、ここで目を瞑るのはダメだったかも――……
「お嬢〜〜〜〜〜!!!!」
突然ドタバタという騒がしい音と声が聞こえて、反射的に那桜から離れる。
まもなく桜花組のみんなが押しかけてきた。
「お嬢!!無事ですか!!」
「みんな!!」
「お、お嬢……!!」
みんなの視線にハッとする。制服引き裂かれて那桜にジャケット借りてるんだった。
「あ、あの……」
「ゴルァァ!!染井の若僧!!うちのお嬢に何してやがる!!」
「違うの!那桜は助けてくれただけだから!!」
今にも飛びかかっていきそうな連中を慌てて止める。
「助けた?染井一家が?」
「あっ、いや……」
「ふざけんなぁ!!染井が桜花を助けるわけねーだろぉ!!テメェがお嬢を……!!」
「違うってば!!」
「若、こちらは全て終わりました」
血気盛んな桜花の連中の中に、スッと入ってきたのはスーツ姿の若くて聡明そうな男性。髪型はオールバックにビシッとセットしている。
この人は何度も見かけたことのある、那桜の側近だ。
確か名前は大山さんだっけ。
「八重様も無事に送り届けております」
「ご苦労」
「こちらのゴミどもも連れて行きます」