幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。


 那桜が新婚だなんて言うから、余計に意識しちゃう……。


――ザク。


 ……ザク?


「ぎゃーーーーっ!!」

「なっ、どうしたんですか!?」

「指切った……」


 思いっきりよそ見してやっちゃった……。
 ダラーっと血が流れ出ていて痛い。


「何してるんですか……」

「よ、よそ見しちゃってた……」

「本当にあなたは目が離せませんね」


 若干呆れ顔を浮かべていたかと思ったら、那桜は私の腕を掴んで傷口を洗い流してくれた。
 テキパキと救急箱を持ってきて、消毒して絆創膏を巻いてくれる。


「はい、これでよし」

「ありがとう。救急箱の場所なんてよくわかったね」

「ずっと雑用をこなしていましたから」


 それでもうちは結構広くて部屋数も多いのに。やっぱり那桜って超ハイスペック。
 悔しいけど。


「ねぇ那桜、なんで桜花組で見習いやろうと思ったの?」


 前にも聞いたけど、改めて尋ねてみた。


「うちの敵情視察じゃないかって噂してるやつもいるんだけど」

「まあそれも一理ありますね」

「あるんかい!」

「でも、一番の理由は鏡花の生まれ育った環境が知りたかったからです」


 え、私の……?


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