幼なじみのハイスペ若頭が結婚を諦めてくれません。
「鏡花が大切にしているものがどんなものなのか、この目で確かめたくなったんですよ」
「那桜……」
「何となくわかった気がします。みんな人の役に立とうという気持ちが強くて、義理人情に熱くて。
川掃除の時は驚きました。見るからにヤクザが混じっているのに、誰も怖がらず好意的で」
「それは毎年のことだから、みんな慣れてるだけだよ」
「でも、あんなに温かい空気があるんだなと思いました。あの環境の中で育ったから、今の鏡花があるんですね」
なんかそんな風に言われると、照れ臭いな……。
「ますます惚れ直しました」
「や、やめてよ……!」
「なんでですか?」
「ちょっ、この手は何!?」
さりげなく腕が首元に回ってエアハグされてるんだけど……!!
「お嬢はどうですか?」
「な、何が!?」
「俺頑張ったんですけど。お嬢のために」
「っっ!」
「惚れ直した?」
「ひゃ……っ」
み、耳元で囁かないで……っ!!
息がかかってゾクゾクする――。
「や、やだ……っ!」
「……」
――かぷ。
「〜〜っ!?!?」
み、耳たぶ甘噛みされた……!?
声にならない声と若干涙目の視線で訴えるけど、むしろ逆効果でしかなくて。
「……かわいい」
「もう、やだ……」
恥ずかしすぎて本当に死にそう――。
「すみません、意地悪しすぎましたかね?」
「ばかあ……」
エアハグじゃなくて、今度はしっかりと抱きしめられた。やっぱりドキドキするのに、どこか安心する。
そう思った直後だった。
「……どういうことだよ」
ドアの前で悠生が曇った表情で私たちを凝視していた。
やばい、どうしよう……?
悠生に見られちゃった……っ!!