神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。

06.


「……まあ、それでは伯爵さまは、各地の遺跡に直接赴いて、調査をしていらっしゃるのですか?」

「ええ。やはり現物や現地を見ないことには、その地の文化というものはわかりませんから。それに、調査のみならず、そうやって同じ空気を吸って当時の人々の生活に思いをはせるということが好きなのです。考古学だけでなく……なんといいますか、自分の知らないものや人に接するということが」

「……素敵ですわね」

「ですが、まあ、ご婦人をあちこち連れ回して日焼けさせるわけにもいきませんのでね。独り身の変人にしかできない趣味というわけですよ」

 そんなことはないのに、とマルガレタは思った。
 確かに女性を付き合わせる趣味ではないかもしれないが、日焼けするくらい自分は気にしないし、何よりとても楽しそうだ。

 学園の選択科目で取っている歴史学の授業、それらの史料を読むことがマルガレタは好きだったが、少しだけ物足りなさも感じていた。
 たとえば彼の研究に参加すれば、もっと歴史というものに、直に触れられるのではないだろうか。

 「よければ私も……」と言いかけて、ハッと思いとどまる。

(いけない。今日はそんなお話をしに来たんじゃないのに!)
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