神託で決められた結婚相手が四十路間際の中年伯爵さまでした。とても気が合って良い方なのですが、私も彼も結婚する気はありません。

10.


「……あの、あなたは何をおっしゃりたいのですか?」

「要するに、『男女の愛は永遠』でも、それは必ずしも”すべての者”を等しく幸福にするわけではないということです」

 アルトナーは巫女に答えると、執事が持ってきた本のうちの一冊を掲げた。

「こちらはヴィルイーンの歴史を現地の学者が編纂したものですが、ありがたいことに千年前のことについても記録が残っており、知りたいことが書かれていました。私も今確認したばかりですが……たとえば、千年前のヴィルイーンの二つの有力貴族が、抗争によって共倒れしたこととか。両家のうち、一方の家の令息と、もう一方の家の令嬢が、駆け落ちして国外へ落ち延びたこととか」

「アルトナー伯爵、だから君は何を……」

 大司教の言葉を腕を伸ばしてさえぎり、彼は続ける。
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