ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。

皇太子妃教育

「ミスティナ様~!」

 翌日、お昼頃。
 全速力で私の所までやってきたツカエミヤは、わんわん大泣きしては私の胸に飛び込んできた。
 一人で特注の手が込んだドレスに着替えなくてよかったわ。
 ドレスを汚してしまう所だったじゃない。もう……。

「ミスティナ様!よくぞご無事で……!私は馬車の中で、ずっと不安でした……!相乗りの従者さんはずっと無言で!怖いかったです……!」
「心配ないわ、ツカエミヤ。怖がらせてごめんなさい」
「み、ミスティナ様に謝罪をしてほしかったわけでは……!」

 ツカエミヤはあわあわと、大慌てで私が謝罪をする必要はないと弁解する。
 ディミオは私とツカエミヤの再会を、優しく見守っているように見えるかもしれないけれど──目は笑っておらず、ツカエミヤの背中を睨みつけている。

「おれのミスティナに、いつまで抱きついているつもり?」
「ひ……っ!」
「ディミオ。ツカエミヤをいじめないの」
「おれの前で、ミスティナに抱きついた彼女が悪い」

 悪びれもしない所は、お兄様そっくりね。
 私は震え上がり悲鳴を上げたツカエミヤから距離を取り、ディミオに出ていくように告げた。
 私が彼の視界から消えたら、そのままどこかにいなくなってしまうと警戒したディミオは、私の首元に魔法を無効化させるネックレスを付けた。
 手負いの獣に言うことを聞かせるための首輪みたいで、いい気分はしないわね……。

「逃げないでね。この後、皇太子妃教育の講師を呼んであるから。ミスティナが逃げたら、面倒なことになる」
「念押ししなくても逃げないから、安心して。私の言葉……信じてくれないの?」
「……扉の外にいるよ。あまり長い時間着替えに掛かるようだったら、中へ入るからね」
「わかったわ」

 ディミオは渋々、部屋の外へ出ていった。くどくどと私に言い聞かせ、魔法を無効化させるネックレスを私の首につけてやっと目の届かない所で着替えるのを許可するって……先が思いやられるわ……。
 こんな状態で、カフシーの家業と同じことをする支店を作り、軌道に乗せられるのかしら?

「み、ミスティナ様……高価なドレスがたくさん……!」
「すべて普段着だそうよ」
「ひえ!?い、いくらすると思ってるんですか!?殿下怖い……」

 ガタガタブルブルと仔鹿のように震えるツカエミヤは天の川をモチーフにしたドレスのうち1つを手に取ると、みすぼらしいと評判のドレスを脱がせてから、丁寧に着せていく。
 ディミオは胸元に輝く大きなリボンとミュールも用意していたようね。
 一式纏った私は、水鏡で自らの姿を確認してからツカエミヤに話しかける。
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