ざまぁ代行、承ります。星空の女神は沈黙の第二皇子とお兄様に溺愛されて、代行業に支障を来しているようです。

「ディミオに相談しても、私の願いは叶わないわ」
「相談する前から、決めつけないでください」

 ディミオに成り代わった際は沈黙の皇子と呼ばれるほどに無言を貫く従者が、これほど饒舌に口を動かすなんて……。
 従者の頑張りに免じて、ディミオへ相談するべきなのかしら?

「殿下の前から許可を得ず、いなくならないでください。殿下は脅せば、皇太子妃の願いを叶えてくださいます」
「ディミオを脅すって……。あなた、見かけによらず過激なのね」
「お褒め頂き光栄です」

 褒めてはいないのだけれど……。
 彼の言い分は理解したわ。
 荒れ狂うディミオを相手にしたくないから、原因となる私へ釘を差しておこう。そういうことね。

「どうしても殿下の許可を得ずにアクシーの家業と似たようなことがしたいのならば、積極的に社交へ参加することをおすすめいたします」
「社交場に、あなたも出席したことがあるのよね。どう?貴族令嬢は、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の集まり?」
「倒しがいのありそうな社会悪を、山程取り揃えております」
「……いいわ。その社会悪、簡単にリストアップしてくれる?」
「私が、ですか」
「ええ、そうよ。ディミオに黙って、王城を抜け出すなと懇願したのは貴方でしょう。責任をとって、協力してもらうわよ」

 淡々と無表情で語っていた従者は、私が協力を要請した途端眉を顰めた。
 あらあら。そんなに私へ協力するのが嫌なんて。
 態度で表されたら、傷ついてしまうわ……。

「私が皇太子妃とお話をしている姿を見られたら……殿下は取り乱されます」
「あら。貴方はディミオの、唯一信頼している従者なのでしょう?愛する人と信頼している人が仲良くしていたら、それはとても幸せなことよね?」

 従者は私の言葉に、同意をすることはなかった。ディミオが信頼している従者に取られるのだけは嫌だと私に告げた話を、従者も二人きりの時にディミオから聞いているのかもしれないわね。

「殿下は、皇太子妃の瞳に映し出す男が、自分一人であるべきだとお考えです」
「生きている限り、それは難しいわ。ディミオが貴方を一番信頼していると私に告げたのなら、人間性は問題ないはず。私がディミオを愛するのが先か、貴方を信頼するのが先か──楽しみね?」
「皇太子妃が殿下を一刻も早く、愛される日が訪れることを願っております」
「ふふふ」

 それって、遠回しに私へ信頼されたくないと断られているのかしら……?
 嫌がられると、余計に自分のものにしたくなるのよね。
 私は仕方なく、ディミオが戻ってくるまでは自室で大人しくしていようと決めた。
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