相思相愛・夫婦の日常~カケ♡サト編~
やけにその翔琉の言い放った言葉が、講義室の中に響き渡った。

ざわざわしていた講義室内が、一瞬でピンと張り詰めた。
隣に座っていた学生は、講義室を出ていってしまう。
翔琉は気にすることなく、また窓の外を見つめる。


シンと静まり返った講義室━━━━━
翔琉一人の雰囲気だけで、ピリピリし始める。

そして、ガラッと引戸が開いた。
教授が来たのかと、学生達が注目する。

しかし立っていたのは、里海だった。

『え……』
(なんで、注目されてるのー/////)

「わ…/////可愛い…//////」
「だよな…/////」

来るのが遅れてしまった里海。
学生達が見惚れる中、キョロキョロと座れる所を探す。

座れるのは、翔琉の隣だけだった。

里海は、翔琉の隣を見つけるとトコトコと向かった。


『━━━━━隣、いいですか?』
翔琉に声をかける。

それまで窓の外を見ていた翔琉が、振り向いた。

『どう━━━━え……』

一瞬だった━━━━━
本当に一瞬で、心が奪われた。

『あの…すみません。
ここしかあいてないみたいなので、座らせてください』
何も言わず固まっている翔琉にそう言って、隣に座りペンケースや教科書等を鞄から取り出す里海。

翔琉は、ジッと見つめていた。
それくらい、目が離せなかった。

心臓がギュッと鷲掴みにされたように痛い。
ドキドキして、甘い痛みで苦しい。

この場に里海しかいないかのように、里海の存在全てに惹かれていた。


『━━━━━━ん?なんですか?』
あまりにも翔琉が見つめていたので、さすがの里海も気になり向き直る。

『え?あ…/////』
翔琉は、ドキドキして言葉にならない。

『もしかして、ここ、貴方のお友達の席とか!?』

『え?あ、ううん!大丈夫だよ!』
このドキドキを悟られないように、できる限り冷静に、そしてできる限り優しく微笑み答える。

『そっか!良かったぁ!』

(わ…/////可愛い/////)
安心したように微笑む里海に、見惚れる。

『僕、井澤 翔琉。
君の名前は?』

『え?』

『教えて?知りたい!君のこと!』

『え?あ…夏尾 里海です』

『夏尾…里海…
綺麗な名前だね……!』

『え?あ、ありがとうございます!』

『この後、講義は?
今日は、何限まで?
終わった後は、時間ある?
あー、それよりも!
ランチ!
ランチ、一緒しない?』

まるで食いつくように、里海に言ったのだった。
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