紳士な若頭の危険な狂愛
座り込んだままの私の前に美東さんが片膝をついて視線を同じにする。
「嫌な物を見せてすみません。立てますか?」
「大丈夫、です」
声が震えた。
足に力を入れて立とうとしたがよろめき、美東さんが私を抱き留めた。
スーツ姿からはわからなかった大きな胸板に、私の胸が跳ねる。
覚えてろよ!!という床に転がったままの男が叫ぶのを美東さんは気にしもしないように、私を気遣って歩き出す。
部屋に居たがたいの良い男はとっくに床で伸びていて、口元からは血が出ていた。
ドアの外には美東さんの仲間らしき数名の男性が腕を組んで立っている。
その中の一人がひらひらと手を振って、それが美東さんに助けられた時に後ろにいた男性だと気づいた。
美東さんに腰を抱かれ店の中を歩けば、他の人たちは状況をわかっていないのか変わらず騒いだままだった。
店を出ると美東さんは私が一人で立てることを確認し、離れると他の人たちと何か話し出した。
後ろから肩を突かれ振り返ると、若い男の人から私の鞄を渡された。