紳士な若頭の危険な狂愛
「一谷さん」
落ち着いた絵理奈ちゃんが離れると、タイミングを見計らっていたかのように社長が声をかけてきた。
「何度君に礼を言っても足りないほどだ。ありがとう。
無事に帰ってきてくれて良かった」
「私こそ社長のお役に立てて良かったです」
「それと・・・・・・絵理奈から聞いたんだが、暴力団が絡んでいたというのは、本当かい?」
探るような声。
社長が浮かない表情だったのはこっちが気がかりだったのか。
「絵理奈ちゃんの通っていた店は、ヤクザが運営していたようです」
「そして助けたのもヤクザだと絵理奈が言うんだ」
社長から話すように肘をつつかれ、横に座る絵理奈ちゃんが記憶を思い起こすように口を開いた。
「えっと店から出て警察を呼ぼうと思ったら、突然スーツを着た男性に声をかけられたの。
『君、一谷綾菜さんを知りませんか』って」
え、と声を漏らす。
「スーツを着た人って、背が高くて丁寧な話し方をする黒髪の人?」
「そうそう。
俳優さんと思うようなイケメンで一瞬頭が真っ白になった。
それに何でか綾菜さんの名前を言うし」
どういうことだろう。
美東さんからは絵理奈ちゃんに助けを求められたと言っていた。
でも絵理奈ちゃんはそれとは逆に、美東さんから呼び止められたと言う。