いつしか愛は毒になる
※※
それは──雅也に乱暴された十日程後のことだった。

私が朝食の準備をしているといつものように不機嫌そうな雅也が黙ってテーブルに腰かける。その時、ふいにインターホンが鳴り、私は応答しようとして、目を見開いた。

「え……」

すぐにインターホンの画面をみた雅也が飛んでくる。

「一体なんで……? 警察なんかが……」

インターホンの画面の向こう側には警察手帳と掲げた警察官が二人立っている。

「雅也さん……どうしたら」

「や、やましいこともないのに……出ないわけにもいかないだろう」

「えぇ……」

「いいか早苗。警察から何を聞かれても知らないと言え! 分かったな!」

雅也は額から流れた汗を手の甲で拭きながら、玄関扉をガチャリと開けた。すぐに恰幅の良い警察官が警察手帳を見せながら玄関先へと、ずいッと入って来る。

「朝っぱらからすみませんね、新山雅也さんでしょうか?」

「えぇ、そうですが。警察の方が何のご用でしょうか?」

雅也が再び汗を拭うと警察官を黙って見つめた。

私は分かっていながらも、《《ついに》》この時が来たのかと思うと、動悸がしてきて呼吸が浅くなる。

そして警察官が白い紙をこちらに向けた。

(あ……っ)

私は思わず口元を覆った。

──「新山雅也、業務上横領罪で逮捕する」
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