冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです
 呼気が喉に詰まって、変な音が鳴った。
 ひたと据えられた視線は痛いくらいで、私は縋るようにシートベルトを掴む。

 車内に沈黙が満ちた。重い空気が迫ってくる。

「……信号、青ですよ」

 やっと言えたのは、それだけだった。

 社長は無言で前を向く。車は高速のインターチェンジをくぐる。ETCの電子音が響いた。
 私は座席に深く座り直し、霞んできた目を擦った。

 思えば、私の家とは反対方向だ。どこに向かっているのだろう。終電で帰れるだろうか……。
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