冷酷御曹司の〈運命の番〉はお断りです
「え? ああ、お口にあったなら何よりです。運命の番パワーかもしれませんが」

 私が減らず口を叩くと、社長は片頬を歪めるように笑った。

「運命の番に必要なものは何だと思う?」

 唐突に投げられた問いに、私は口を閉ざす。
 考えた事もなかった。私にとって運命の番は憎むべきもので、それ以上でも以下でもない。

「さあ……遺伝子上の相性?」
「身も蓋もないな」
「じゃあ社長は何だと考えているんですか?」

 社長の手元でスプーンが止まる。社長はしばらく黙りこくった後、ぽつりと告げた。

「……代替不可能性」
「つまり?」
「その相手でなければならないという強い確信。それを抱かせるに足る、欠落を埋められる唯一の存在――なんてな」

 社長がまたスプーンを動かし始める。だが私は何かが引っかかった。

「欠落、ですか」

 指先で顎をつまむ。私には欠落がたくさんありすぎて、どんな相手でも割とハマる気がした。

 というか。

「それなら、社長にも何か足りない所があるんですか」

 聞くと、社長がニヤリと唇を緩める。試すような目つきで、

「ある。何だと思う?」
「ええ? 難しいですね……」

 頭を捻るが、パッと答えが出てこない。少し唸って「あ、分かりました」と手を叩いた。

「休息時間では? いっつも仕事してますから。今だってこんな時間にシチュー食べてますし」

 時計を見ると、もう日付が変わる頃だった。私も早く寝たい。

 自信満々の私の顔を見て、社長が唖然としている。ややあって、耐えきれないというように噴き出した。
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